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映画「ゲッべルズと私」

 あれよあれよという間に夏がやってきたかと思えば、急に冷え込み、なんとも御しがたい5月となりました。みなさまお変わりございませんか。

 昨日のニュースで、是枝裕和監督がカンヌのパルムドールを受賞と知り、何度もノミネートされながら、やっとこさの快挙に拍手を送ります。「万引き家族」是枝監督らしい作品みたいですね。家族をちょっと違う視点でとらえ、悪と言われることも、まったく違う視点からみる。「誰も知らない」は、今でも強く心に残っています。俳優陣もなかなか味があり、早く見たいものです。
 
 今日紹介する映画は、「ゲッベルスと私」ドキュメンタリーです。まずチラシに映る彼女の姿が、エッと言葉を失うくらいの衝撃を与えます。
 ヒットラーの右腕であり、ナチスの宣伝大臣であるヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働いた女性、ブルンヒルデ・ボムゼル103歳へのインタビューです。圧倒されるのは、クローズアップされた彼女の顔に刻まれた深いしわです。敗戦から69年の沈黙を破り語りだす貴重な証言は、見るものを強く引く付けます。当時有能なタイピストであった彼女は、よりよい仕事を目指し、ゲッベルスの秘書となり、狂気の時代の中枢に巻き込まれていくのです。
 
 彼女は「自分のことしか考えられなかった」「国中がガラスのドームに閉じ込められたようだった。私たち自身が、巨大な強制収容所にいたのよ」と語ります。103歳とは思えない記憶力と力強い語りに、あの時代の恐ろしさを感じます。彼女はただ自分の仕事に忠実であっただけであり、その仕事がどのような世界と繋がっているかは知らなかったというのです。これは、今にも通じる話かもしれません。目の前の仕事だけをこなし、上司に忖度する官僚たち。私たちは歴史に何も学ばなかったのでしょうか。
 監督はオーストリアやドイツなどの若手4人が共同でおこなっています。インタビューの間に挟まれる、当時の未公開、無編集のフィルムが、あの時代を鋭く描き、事実と現実をつなげていきます。戦後70年を超え、またあの恐怖の時代に舞い戻るのでしょうか。普通の人たちが、気が付けば狂気に巻き込まれていく。そのことを一人の女性が生々しくも冷静に語ります。不寛容で格差の激しい今の世界、歴史の真実を見つめることから考えていかなければと思います。
 彼女は、ヒットラーやゲッベルス自殺の後、ソ連軍に捕らえられ1950年までの5年間強制収容所に抑留され、解放後は1971年の定年退職まで、ドイツ公共放送連盟で働き、2017年ミュンヘンの老人ホームにて死去。享年105歳、独身であったといいます。
 ある意味時代に翻弄された一人の女性に刻まれた深いしわ。今映像を通して、わたしたちに語りかけます。時代はつながっているのだと。ぜひ映画館で体感してください。(せ)
★6月30日(土)シネリーブル梅田公開★
 

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コメント

PCが気まぐれで、開いたまま閉じなかったりするので私はお気に召すままに・・と、その対応に合わせてます。
今日はこちらへやってこられて良かった。

昼間は暑いけど朝晩凌ぎ易いので、この季節が私は気に入ってます。
もうすぐジメジメの季節になるし、それが明けると夜もエアコンがないと暑くて眠れなくなりますからね。

映画「万引き家族」見てみたいですね。「誰も知らない」「そして、父になる」も私は見ました。
誰も知らないの後半で、広い空港の草むらで、スーツケースを置いて佇んでた兄弟の映像が今も目に浮かんできます。

ご紹介の映画、是非見たいですね。
誰も悪いことをしてる気はないままに、恐ろしいことに加担してた歴史上の事実。
日本の第三部隊の人体実験が重なってきます。
仕事に忠実だっただけの看護師は、自分が中国人を丸太扱いしてるから、目の前にいるのが自分と同じ人間だということに思いを馳せることがなかった。
今になって話題になってる優生保護法で不妊手術を受けさせられた人々にも、当時の医者たちはその行為に疑問をもつことがなかった。
状況次第で、誰もが仕方がないとつぶやきながらそういう立場になりうるといことを思います。
詭弁や嘘がまかり通る今の政治や社会の在りように、自分にそうした一面がありはしないか?と、問わねばならない日々でもあります。

投稿: とんび | 2018年5月25日 (金) 12時18分

昨日のメール、書きそこないました。
第三部隊ではなく、あの恐ろしい七三一部隊でした。訂正させてくださいね。

投稿: とんび | 2018年5月26日 (土) 09時30分

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