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2018年5月

映画「ゲッべルズと私」

 あれよあれよという間に夏がやってきたかと思えば、急に冷え込み、なんとも御しがたい5月となりました。みなさまお変わりございませんか。

 昨日のニュースで、是枝裕和監督がカンヌのパルムドールを受賞と知り、何度もノミネートされながら、やっとこさの快挙に拍手を送ります。「万引き家族」是枝監督らしい作品みたいですね。家族をちょっと違う視点でとらえ、悪と言われることも、まったく違う視点からみる。「誰も知らない」は、今でも強く心に残っています。俳優陣もなかなか味があり、早く見たいものです。
 
 今日紹介する映画は、「ゲッベルスと私」ドキュメンタリーです。まずチラシに映る彼女の姿が、エッと言葉を失うくらいの衝撃を与えます。
 ヒットラーの右腕であり、ナチスの宣伝大臣であるヨーゼフ・ゲッベルスの秘書として働いた女性、ブルンヒルデ・ボムゼル103歳へのインタビューです。圧倒されるのは、クローズアップされた彼女の顔に刻まれた深いしわです。敗戦から69年の沈黙を破り語りだす貴重な証言は、見るものを強く引く付けます。当時有能なタイピストであった彼女は、よりよい仕事を目指し、ゲッベルスの秘書となり、狂気の時代の中枢に巻き込まれていくのです。
 
 彼女は「自分のことしか考えられなかった」「国中がガラスのドームに閉じ込められたようだった。私たち自身が、巨大な強制収容所にいたのよ」と語ります。103歳とは思えない記憶力と力強い語りに、あの時代の恐ろしさを感じます。彼女はただ自分の仕事に忠実であっただけであり、その仕事がどのような世界と繋がっているかは知らなかったというのです。これは、今にも通じる話かもしれません。目の前の仕事だけをこなし、上司に忖度する官僚たち。私たちは歴史に何も学ばなかったのでしょうか。
 監督はオーストリアやドイツなどの若手4人が共同でおこなっています。インタビューの間に挟まれる、当時の未公開、無編集のフィルムが、あの時代を鋭く描き、事実と現実をつなげていきます。戦後70年を超え、またあの恐怖の時代に舞い戻るのでしょうか。普通の人たちが、気が付けば狂気に巻き込まれていく。そのことを一人の女性が生々しくも冷静に語ります。不寛容で格差の激しい今の世界、歴史の真実を見つめることから考えていかなければと思います。
 彼女は、ヒットラーやゲッベルス自殺の後、ソ連軍に捕らえられ1950年までの5年間強制収容所に抑留され、解放後は1971年の定年退職まで、ドイツ公共放送連盟で働き、2017年ミュンヘンの老人ホームにて死去。享年105歳、独身であったといいます。
 ある意味時代に翻弄された一人の女性に刻まれた深いしわ。今映像を通して、わたしたちに語りかけます。時代はつながっているのだと。ぜひ映画館で体感してください。(せ)
★6月30日(土)シネリーブル梅田公開★
 

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巨星逝く

 4月に半ばにイギリスから帰って、何やかやバタバタしており、あやーもう五月なんやと言ってるうちに、悲しい知らせが続きます。

 
 まず昨日、絵本作家の「かこさとし」さんが92歳で亡くなられたのを知り、今朝は、イタリアの巨匠「エルマンノ・オルミ」監督が86歳で亡くなられたと知りました。それぞれ大好きな世界から、偉大な方が次々亡くなられ淋しい限りです。
 かこさとしさんは「だるまちゃんとてんぐちゃん」シリーズで有名な絵本作家です。わたしはかこさんの化学絵本が大好きで、わがやにもボロボロになってまだでんとあります。たまたま、ロンドンの次男の家で、パートナーのなっちゃんがポンと机に置いてあった「未来のだるまちゃん」を読みだして、おもしろくてとうとう帰るまでに読んでしまいました。いやーすごい人なんですね。この世代の人が、戦後の子どもたちに本物の文化を伝えたいとがんばられた。瀬田貞二さんなんかもそのおひとりですね。おかげで、日本の子どもたちにも楽しく豊かな世界が訪れました。帰国したら、もう一度かこさん絵本を読もうと思ってたやさきです。今わたしの机には「加古里子 絵本への道」があります。
 もうひとりの監督は、もう大好きな監督で、もちろん「木靴の樹」で有名なのですが、わたしは一番最近見た「緑はよみがえる」も、ちょっと前の「ポー川のひかり」も、人生ベストのなかに入れてもいいかなと思うくらいの作品たちです。あのひょうひょうとした雰囲気が、あんなに深い映画を作られる。すごいです。
 
 お二人とも、戦争への熱い思いや自然への深い洞察。芯の通った生き方をされた方でした。そして、なにより子どもの味方、庶民の味方の方でした。残念ですが、しっかり人生を全うされ、頭がさがる思いです。
 毎日、暗くおどろおどろしいニュースが届くなか、悲しいけれど、胸がすっとして背筋が伸びる知らせに、身が引き締まりました。
 5月、山は新緑に新しい花々、素晴らしい世界をくり広げてくれています。感謝します。(せ)

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