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映画・二本

 大阪は急に春めいてルンルンしていますが、なんと北の方では猛吹雪とか。まだまだ厳しい時節ですね。今年はほんとに長く寒い冬でしたと言うのも叱られそうですが、軟弱大阪人にとっての実感です。大きな事故のないこと祈ります。

 今週、面白い映画を二本見ました。映画の世界ってほんまに広いなーと思わせてくれる映画たち。3月末から4月初めの公開で、まだ書くのは早いかなーと思いつつ、そう言いながら紹介しなかったことが多いので反省を込めて書きます。
★ 「修道士は沈黙する」3月31日・シネリーブル梅田にて公開
 こちらはスタイリッシュな社会はサスペンスという宣伝文句なのですが、なかなか今という時代を考えらさせられる深い映画でした。ドイツの高級リゾートホテルを舞台に「G8」や「IMF」などの言葉が飛び交うおどろおどろしい世界に、一人の修道士、それも「清貧と沈黙」を戒律とする教会のイタリア人修道士サルスがゲストとして招かれます。招待したのは、天才エコノミストとして知られるIMF国際通貨基金の専務理事ロジェです。他にも絵本作家とミュージシャンが招待されています。ロジェは自分の誕生日の夕食に彼らを招き、その夜サルスに「告解」をしたいと告げます。そして翌朝、彼は遺体で発見されます。自殺か他殺か。。。
 ここから物語は大きく展開ミステリアスな世界へと見るものを誘います。こう書きながらも、いくつかのシーンが浮かびます。なんともうまい演出にグイグイ引っ張られていくのです。世界を牛耳るエコノミストの集まりに、沈黙に生きるサルスが巻き込まれることで、「政治と宗教」「物質主義と精神主義」「饒舌と沈黙」いくつかの対極の世界が表れるのです。
混迷を告げる世界の中で、何をどうしたらいいのかさえ見失ってしまい、ただ経済至上主義がはびこり、社会はどんどん悪くなっていくように思えます。
 
 権力は常に秘密を作りそれをただ守ろうとする。今のこの国の国会もまさにその通りです。そこに全く超えた価値観で現れた一人の修道士の、深い沈黙によって守られる自由。
この映画はイデオロギーを主張する映画ではないと監督は語ります。確かに、見る人一人一人に届くメッセージはそれぞれ違うでしょうが、はたと立ち止まり考える時間を与えてくれます。
 なによりこの映画はキャストによるところが大きいです。修道士を演じるト二・セルヴィッロの佇まい立ち居振る舞い、深いまなざし。圧倒的な、しかし静かな存在感。ロジェを演じるフランスの名優ダニエル・オートゥイユの世界のトップに立ちながらも苦悩する人間の不安と自信。他にも味のある役者が脇をかためています。
 監督は「ローマに消えた男」などで知られ、オペラや演劇にも携わるロベルト・アンド―です。さすが音楽も素晴らしく、サスペンス映画の音楽とは違う独特の世界を築いています。
 ロジェの葬儀で語るサルスのことばは、現代社会への痛切なメッセージとして人々に迫り、ラストシーンは、心あたたまる寓話として笑顔を届けてくれます。イタリア的ユーモア―も忘れない監督・キャスト・スタッフに感謝です。
★「LUCKY・ラッキー」4月7日・テアトル梅田にて公開
 こちらは、前作とは全く違うアプローチ。昨年9月に91歳で亡くなった名優ハリー・デイーン・スタントンに捧げられた映画。奇しくも彼の最後の主演映画となりました。彼の名前を聞いてもピンと来なくても「パリ、テキサス」で妻と息子を捨て4年間失踪していた主人公とラヴィスを演じた役者と言えば思い出す人も多いのではないでしょうか。とにかく個性的ステキな役者でした。
 その彼をそのまま撮ったと言える作品です。
「全ての者に訪れる死 90歳の気難しい現実主義者ラッキーのたどり着いた、ある答え」
このキャッチコピーそのままの、素晴らしい作品です。これは見ていただくしかない映画です。ストーリーはラッキーの日常です。そのシンプルな日常には学ぶべきこと多々ありです。老いるということは、こうなるんだなー。今の日本は、なかなか自然に枯れていけない世の中です。いくつになっても働いて、元気に活躍する人が称賛される。経済活動をするためだけに生まれてきたんじゃないと思うのですが。年寄がそこまでしないと、ゆっくり枯れていけない社会は貧しいです。国の政策に問題があったのです。年金どうなん!と言いたい。
 「孤独」と「一人」は同じじゃない。とか、多くの名言が飛び交います。アンチエイジングなんかくそくらえ、いやそういうパワーではなく、ただこうなってしっかり老いて行けばいいんだというメッセージをもらえます。ちょっと悲しくて笑えてそれでも目を離せない、独特な世界が描かれています。ラッキーの友だち役に、なんと名監督デビット・リンチが登場、味のある役を上品に演じています。こちらも音楽がいいのです♪そしてラッキーこそ自由なんだ。修道士のように厳しい戒律の世界に生きなくても、こんなに自由に生きられるんだとも思いました。若い人にはどうかなーとも思いますが、我らの世代は必見ですよ。
 立て続けに、まったく違うアプローチの映画を二本見て、いやあらためて映画ってすごいなと思いました。たった2時間くらいで、ほんとにいろんな価値観や世界に連れて行ってくれるんだから。そして根底に流れるものはつながっていると感じる二本でした。ハリウッド映画の世界の終末を煽り立てるバンバンうるさい映画では見られない世界です。
 争いや事件が絶えない社会ですが、結局自分が生きてる世界をしっかり見つめ、やっぱり自由におおしく生きていきたいですね。そして沈黙とシンプルを深く学びました。人間ひとりで生まれてひとりで死んでいく。何も持って死ねないしね。春もそこまで、たまには映画館出かけてください。きっと元気でますよ!イエーイ(せ)
 

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コメント

なんと、魅力的な映画二本、しかも、共通したものを感じます。今から、行く日を決めておこうかしら。

投稿: パン食い協奏 | 2018年3月 2日 (金) 22時19分

パン食い協奏さま
長文読んでいただき感謝です。ついつい長くなるのです。やっぱりおしゃべりなんやねー(せ)

投稿: | 2018年3月 3日 (土) 21時29分

久々の書き込みですね。それもいい映画を2本も紹介してくださって有難う。
公開がちょっと先だから、タイトルと上映館を記録しときます。
観たいと思う映画も見逃してしまうことが多いのでね。
この2本の映画に共通していることは、どんな状況であれ、自分を生ききるということの大切さでしょうか。そのためには何かに縛られないで、自分らしく生きる気持ちの自由が必要だということでしょうが、中々難しいことです。

昨日は気温がグッと上がって、外出日和りでしたね。私もちょっと元気出して、京都の出町座で「息の跡」という映画を観てきました。
「風の波紋」の小林茂監督と映画編集者の秦岳志さんから紹介されてたのでね。
陸前高田で種やを商う佐藤貞一さんの日々を撮ったドキュメントで、小森はるか監督の作英品でした。観た後で、ジワッーと力が沸いくるような映画でした。
「記録なければ全てなし」と言われてた故・土本典昭監督の言葉のように、佐藤さんは文字で震災の記録を遺すことを自分に課してました。
日本語よりも外国語の方が語りやすいと、自費出版で作られた冊子は英語や中国語で書いてあります。写真もたくさん載ってました。
海外からの注文が次々届いてるようです。
子供に学問はそこそこでいいと言われて大きくなった佐藤さんは、生きる力を育まれたことがよくわかりました。
自分で井戸を掘り、そこに絵を描いたり、かざぐるまをそこかしこに置いたり、小さな種やの店の窓を拭いたり表を掃いたりと、とにかくよく動く人でした。
自分で書いた外国語を大きな声で読んで手直ししてる佐藤さんの姿は、とても楽しそうでした。何が大切かを見せてもらってるような気がしました。
出町柳の活気に満ちてる商店街の一角にある出町座は食事ができるし、壁いっぱいに並んでる本も売ってる本屋でもありました。

投稿: とんび | 2018年3月 4日 (日) 09時06分

とんび姐さん
コメントありがとうございます。どうなさってるかとの声も上がっておりましたよ。
「風の波紋」前に見ました。英語と格闘する彼の姿よかったですね。ほんま世界に発信しないと。やっぱり個から始まるんですね。
わたしは、今日1年締めくくりのおはなし会、自分では成功したと思いうれしかったです。暖かい声もいただき励まされました。お天気もよく、帰ってさっそくご褒美のエビスビールいただきました。うまいわー。すぐにビールが恋しい時節になりそうですが、いやいや春を楽しみましょう!
出町座しりませんでした。単館の映画館が無くなるなか、新しい形の上映館ができているとは聞いていましたが、いいことですね。これからは、知恵と工夫が試される時代です(せ)

投稿: | 2018年3月 4日 (日) 18時29分

早めに書きこんでいただいたおかげで、修道士は沈黙する、見に行けました。
難しい所もありますが、ファンタジやユーモアの要素もあり、面白かったです。何より、ラストが素敵。
また、おすすめ映画のご紹介よろしくお願いします。

投稿: パン食い協奏 | 2018年4月15日 (日) 16時37分

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